研究論文

パーキンソン病における酸化ストレス、症状並びにマイクロバイオームに対するFPPの効果

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Effects of dietary supplementation with fermented papaya on oxidative stress, symptoms, and microbiome in Parkinson's disease

Functional Foods in Health and Disease, 13(4), 191-207. April 14, 2023

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背景:酸化ストレスは、酸素と窒素によるフリーラジカル発生と中和の代謝過程におけるホメオスタシスの変化(レドックスバランスの破綻)により生じ、神経変性疾患などの典型的な病態を引き起こす。パーキンソン病(PD)では、中脳の黒質に存在するドーパミン作動性神経細胞に対し酸化ストレスが関与していると考えられる。レドックスバランスの破綻のみが神経変性の主要な原因ではないが、細胞損傷の進行に関与していることは確かである。

目的:PDの酸化ストレスとそれに起因する酸化ダメージを予防または軽減するための介入は極めて重要である。本研究では、FPPを長期摂取したPD患者のレドックスバランス、臨床症状や腸内細菌叢に対する効果を評価した。

方法:ホーン・ヤールの重症度分類I-II度およびレボドパ製剤(300 - 1,200 mg/)を服用するPD患者を、FPP(19)とコントロール群(20)に分け、19gFPPまたはプラセボを6ヶ月間摂取した後、摂取内容を交換し更に6ヶ月間継続した。各治療開始時と治療終了時に、生化学および血液学検査を実施し、抗酸化能、フリーラジカル(過酸化物)に加え、DNA及びタンパク質の酸化損傷のバイオマーカーを測定した。また、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の変化を評価した。さらに、臨床症状やQOLに対する効果を検証するため、PD評価スケールによる患者の運動症状や認知機能を評価した。

結果:コントロール群と比較し、FPP群は、フリーラジカルの増加を認めず抗酸化能(グルタチオン, 2-dG)が向上し、タンパク質、特にDNAにおける酸化損傷(8-OHdG)が減少した。さらに、FPP群では、認知機能やパーキンソン病に関する臨床所見とQOLが改善した(表)。マイクロバイオームの結果は、治療法との関連はみられなかった。

結論:PDを対象とした本研究は、FPPが酸化ストレスの緩和と運動症状や認知機能を改善する優れた効果を有する可能性を示している。また、FPP摂取によりマイクロバイオームの組成が変化していないことから、腸内細菌群の増殖ではなく代謝を改善することで効果を発揮し、腸管粘膜の健全性に作用したと考えられる。

(表)各治療開始時と終了時におけるPD評価スコア:
t検定とウィルコクソン検定による統計分析 (太字は有意差を示す, p<0.05)

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FPP群は、コントロール群と比べ多くの項目において有意な改善を認めた。