研究論文

パパイヤ発酵食品の経口摂取による糖尿病マウスの創傷部におけるマクロファージの機能改善及び創傷治癒促進

Improved function of diabetic wound-site macrophages and accelerated wound closure in response to oral supplementation of a fermented papaya preparation

Antioxidants & Redox Signaling. 13(5):599-606,2010

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Carica papaya Linnは薬効のある果物として広く知られている。本研究では、糖尿病マウスに対FPP投与で、創傷治癒が促進されることを検討した。通常、創傷治癒の過程は、マクロファージの動員と機能、NADPHオキシダーゼによるROSの誘発、血小板による止血作用や生理活性物質の分泌を経て、血管新生、線維芽細胞増殖、肉芽組織形成が起こり治癒へと進む。しかし、糖尿病による高血糖は脂質の代謝を促進し、コレステロールの合成を促す。コレステロールが産生されるとLDLが増加し、増加したLDLは内皮細胞上で酸化され、酸化LDLが内皮細胞の機能を障害し、NO合成を低下させる。 糖尿病患者の血管ではSOD蛋白が減少していて、内皮細胞ではスーパーオキサイドアニオンが過剰となり、NOの分解が進んでいる。NOの産生が低下すると、血小板が内皮細胞へ粘着するようになり、血栓形成の原因となり、また血管平滑筋の緊張増加による血管収縮、血流低下などの現象が起こる。これらの原因により組織への血流が不全になることから、創傷治癒の働きが低下し、また、腎症、網膜症、脳梗塞、心筋梗塞などの合併症を引き起こす要因にもなりうる。

糖尿病(db/db)マウスに対する8週間のFPP経口投与の結果:
1.体重増加に作用せず、血糖値上昇の%比率は抑制した(図1)
2.LDL、TGLおよびTCHOLの値を低下させ、HDLを上昇させる血中脂質の改善が認められた
3.創縫合と血管形成の速度の有意な上昇が認められた(図2)
4.創縫合速度の上昇は、マクロファージ機能の好転を示す、創傷治癒マクロファージによるNOとスーパーオキシド産生の促進を促す。
5.iNOSとVEGF遺伝子発現は、FPP摂取したdb/dbマウスの創傷において著しく上昇した。

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図1血中血糖値の変化

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図2傷の大きさの変化

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図3創傷マクロファージによるNO産生の上昇と傷組織におけるiNOS遺伝子発現の改善

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図4CD68およびVEGF遺伝子の改善


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